2010 年 71 巻 7 号 p. 1901-1904
患者75歳の男性で,左鼠径部膨隆と左鼠径部痛を主訴に当科を受診した.来院時陰嚢は人頭大に腫脹し,陰茎は埋没していた.CTでS状結腸を内容物とする左鼠径ヘルニアと診断した.用手的還納を試みるも整復できず,緊急手術を施行した.左鼠径部を切開し鼠径管を開放し,脱出するS状結腸を確認したが,鼠径法では還納が困難であり,追加した正中切開からの操作で脱出腸管を還納した.Direct Kugel Patch®(Mサイズ)を用い,ヘルニア門を修復した.術後腹腔内圧の上昇もあり,呼吸状態が悪化したため人工呼吸器管理を余儀なくされたが,術後3日目に抜管した.その後の経過は順調で,術後9日目に退院となった.現在ヘルニアの再発は認めてない.