2010 年 71 巻 8 号 p. 2011-2015
内視鏡治療の普及とともに医原性消化管穿孔の報告も増えている.今回われわれはESD施行中に医原性食道穿孔をきたした症例を経験した.症例は62歳男性.検診で発見された中下部食道にある4cm大の食道癌をESDで切除した.施行直後から皮下気腫を認め,CTで縦隔気腫と両側気胸を認めた.外科紹介となり,緊急手術で両側縦隔・胸腔ドレナージを行った.8PODに食道造影で漏れがないことを確認した後に経口摂取を開始し,12PODにドレーン抜去,22PODに軽快退院された.食道穿孔の80%が医原性であるが,診断や治療の遅れで致命的な合併症になることもあり,保存的加療か手術かを判断するのは難しい.今回の症例について治療選択が適切であったかについて検討した.保存的および外科的治療それぞれの適応について熟知しておくことで過不足ない管理ができるよう心がけておく必要がある.