日本臨床外科学会雑誌
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症例
陳旧性日本住血吸虫症を伴う5多発早期胃癌の1例
武藤 頼彦鍋谷 圭宏谷澤 豊林 秀樹谷澤 徹落合 武徳松原 久裕
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2010 年 71 巻 8 号 p. 2021-2025

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抄録

症例は70歳代後半の男性.検診で胃癌が発見され,術前の上部消化管内視鏡検査にて体上部2カ所と幽門部の計3カ所に多発する分化型早期胃癌の診断となり,胃全摘術を施行した.病理組織学的検索にて,術前診断し得なかった2病変を含む5カ所の多発早期胃癌を認めた.全て分化型の粘膜癌で転移はなくfT1N0H0P0CY0M0のfStageIaであった.さらに,粘膜下層から漿膜下層に日本住血吸虫卵が散在し,癌周囲で虫卵数が多い傾向を認めた.一方,背景胃粘膜に萎縮や腸上皮化生変化は少なかったが,免疫染色の結果から腫瘍胃粘膜は腸型形質を有していた.術後3年健在で,再発の兆候を認めない.全て分化型の同時性多発胃粘膜癌は極めてまれである.本症例は腸上皮化生を背景とせず,日本住血吸虫卵の存在が発癌に関与した腸型の多発早期胃癌の可能性が考えられる.稀少性とともに胃発癌機序解明の点からも貴重な症例と思われ,若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2010 日本臨床外科学会
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