2010 年 71 巻 8 号 p. 2057-2062
症例は73歳,男性.既往に胆嚢摘出術,総腸骨動脈瘤に対してYグラフト置換術を施行されている.現在までに有機溶剤の暴露歴はない.3年前からイレウスを繰り返し,6カ月前,開腹手術を施行したが,明らかな閉塞部位を認めず,以後は特発性慢性偽性腸閉塞症の診断で経過観察していた.今回,強度の腹痛が出現し受診した.CTにて腸管嚢胞様気腫症を疑ったが,強い自発痛を認めたため緊急開腹術を施行するも腸管壊死は認めなかった.退院数日後に腹部膨隆で再入院した.CTにて高度な門脈ガス血症と腸管気腫を認めたが,腹膜刺激症状を認めず,前回にも類似エピソードを認めたことから厳重な経過観察を選択した.16時間後のCTでは,門脈ガスと腸管気腫は消失していた.最終的には,重度低栄養から肝障害が進行して死亡した.画像上腸管壊死が否定できない場合の保存的治療の可能性について,文献的考察を加え検討した.