日本臨床外科学会雑誌
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症例
生体腎移植後48日目に発症した漏出性胆汁性腹膜炎の1例
榎本 浩士高山 智燮松本 壮平田仲 徹行吉田 克法中島 祥介
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2010 年 71 巻 8 号 p. 2150-2154

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抄録

症例は39歳,男性.2009年4月に生体腎移植を受け43日目に退院.退院後5日目の夜に突然激しい腹痛を認め当院受診.右下腹部の激しい痛みを訴えた.腹部エコー,CTにて胆石や胆泥は認めないが腫大した胆嚢と胆嚢周囲,モリソン窩,右横隔膜下に腹水の貯留を認めた.以前の画像に比べて胆嚢の腫大が縮小傾向で胆嚢穿孔が疑われ外科紹介となった.触診上,右季肋部を中心に著明な圧痛と反跳痛,筋性防御を認めた.炎症反応も高値を示し,胆嚢穿孔の疑いで同日緊急手術を行った.開腹所見は,腹腔内全体に胆汁混じりの腹水の貯留を認めた.特にモリソン窩において濃い胆汁の貯留を認めた.胆嚢の穿孔は認めず,消化管の穿孔も認められなかった.このため胆嚢摘出術と腹腔内洗浄を行った.術後経過は良好で術後9日目に退院.病理学的には,胆嚢の大部分で粘膜上皮は消失し,ほぼ全層性に変性・壊死に陥っていた.漏出性胆汁性腹膜炎は,胆嚢に明らかな穿孔を認めず胆汁漏出によって生じた腹膜炎であり,比較的まれな疾患である.胆嚢内胆汁鬱滞により血管・リンパ管の閉塞が生じ,胆嚢壁が阻血壊死に陥って胆嚢壁から胆汁の漏出を招いたものと考えられた.

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© 2010 日本臨床外科学会
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