2010 年 71 巻 8 号 p. 2169-2172
腹部大動脈瘤と消化器悪性疾患の併存は時に経験することがある.その際に同時手術を施行するのか,二期的に手術を施行するのか,二期的手術ならばどちらの手術を優先するのか判断に苦慮することが多い.今回われわれは両疾患の合併例に対し同時手術を施行し,良好な経過を得られたので報告する.
症例は85歳,男性.便秘を主訴に施行した大腸内視鏡検査で直腸癌を指摘された.術前精査目的の腹部CT検査で,65mmの腹部大動脈瘤が発見された.瘤径より破裂の危険性が高く,さらに腸閉塞症状もきたしていることより同時手術を選択した.まず腹部大動脈瘤に対して,瘤切除術,Y型人工血管置換術を施行した.後腹膜を完全に閉鎖した後,直腸癌に対しハルトマン手術を施行した.術後経過は良好であった.両疾患の併存例では症例によっては同時手術を選択した方がよいと考えた.