抄録
症例は67歳,男性.約30年前にS状結腸癌の治療歴あり.吐下血にて近医受診.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部に2型腫瘍を認めた.また腹部CTにて膵尾部に腫瘍性病変を認め,精査加療目的にて当院入院.十二指腸癌および膵尾部腫瘍の診断にて膵全摘術を施行.術後は問題なく経過.病理組織学的検査では,十二指腸癌はmoderately differentiated adenocarcinomaであり,膵尾部腫瘍はpoorly differentiated adenocarcinomaであり,両者には病理組織学的に連続性は認めなかった.MUC1による免疫染色にて,十二指腸癌は陰性であり,膵尾部癌は陽性であった.以上の所見より,両腫瘍はそれぞれ独立して発生したものと考えられた.術後は5カ月で原因不明であるが,自宅にて死亡した.十二指腸癌と膵癌の同時性重複癌および結腸癌を含む3重複癌を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.