日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術直後に発症した成人右側Bochdalek孔ヘルニアの1例
西脇 誠二佐伯 典之四方田 大介須郷 慶一北見 明彦中山 茂樹
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2011 年 72 巻 11 号 p. 2822-2827

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抄録

症例は59歳,男性.直腸癌に対し腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術施行.手術数時間後より呼吸循環障害あり.胸腹部CTにて肝右葉,小腸が右胸腔内に脱出.脱出小腸は拡張,壁肥厚あり.右肺中下葉は圧排され無気肺となり,軽度気胸を伴っていた.以上の所見より,右横隔膜ヘルニア嵌頓と診断し緊急開胸手術施行.右横隔膜後外側にヘルニア門を認め,右側Bochdalek孔ヘルニアと診断.脱出小腸は拡張し軽度浮腫状ではあったが血流障害は認められず,切除再建を行わずに腹腔内へ還納.脱出していた肝右葉も腹腔内へ還納し,ポリプロピレンメッシュにて横隔膜欠損部を補填した.成人右側Bochdalek孔ヘルニアの報告例は非常に稀ではあるが,無症状で経過している症例が潜在的に数多く存在している可能性があるとも報告されている.本症例の発症契機は長時間の気腹操作であると考えられ,術後合併症の一つとして念頭に置くべき疾患であると思われた.

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