日本臨床外科学会雑誌
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症例
回腸膀胱瘻の長期経過中に発癌したCrohn病の1例
松岡 宏樹内野 基坂東 俊宏池内 浩基冨田 尚裕
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キーワード: Crohn病, 内瘻, 瘻孔癌
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2011 年 72 巻 2 号 p. 388-393

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抄録

回腸膀胱瘻を形成後23年間経過し,進行癌に発展したCrohn病(Crohn's disease;以下CD)を経験したので報告する.症例は52歳男性.29歳に小腸大腸型CDと診断,同時期に膀胱瘻指摘されていたが手術を拒否し,成分栄養療法や5-ASA製剤で加療されていた.52歳時に直腸─膀胱─回腸瘻を指摘,また血尿もあり膀胱壁の生検を行うとMucinous adenocarcinoma(以下muc)と診断された.CDによる消化管膀胱瘻と同部位からの発癌の診断で回盲部切除術・Hartmann手術・S状結腸人工肛門造設術・前立腺膀胱全摘術を施行.回腸末端・膀胱・直腸は一塊で瘻孔を介して交通していた.この病理組織検査でもmucで,瘻孔由来の癌が特に膀胱方向へ浸潤したものと考えられた.退院後,化学療法を行っていたが6カ月後に癌死した.内瘻部の発癌のリスクは不明であるが,本症例のように発癌する症例もみられるため,内瘻は積極的に手術を行うべきであると思われた.

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© 2011 日本臨床外科学会
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