2011 年 72 巻 3 号 p. 537-549
高度肥満症は死亡率を高める併存疾患群を有するために積極的な治療が必要だが,外科治療法が唯一信頼できる方法である.日本では,欧米などの諸外国と比べて対象となる患者が少なかったという幸運もあり,米国に遅れること30年を経た1982年初めての手術が行われた.主な手術術式として,胃バイパス術,胃形成術,胃バンディング術,スリーブ状胃切除術などが行われてきた.胃の容量を小さくしてカロリー摂取をおさえる狙いが中心であったが,近年はBMIの高い患者が増えてきたため,消化・吸収能抑制を併せた術式も多くなっている.また糖尿病治療に焦点を当てたmetabolic surgeryの概念がうちだされて,我が国にも急増していて,有効な治療法が求められる本疾患の外科治療法への歩みもはじめられた.手術は対象が超肥満のために煩わしかった開腹手術から,腹腔鏡下手術にてできる手術機器用具が開発され,手技の進歩で患者への福音となり,今後の大きな展開が期待されている.