2011 年 72 巻 3 号 p. 555-559
甲状腺濾胞癌の診断は組織学的に行われ,術前・術中に濾胞腺腫と鑑別することは困難なことが多い.また濾胞癌でも遠隔転移を生じない症例では生命予後は極めて良好で,治療に難渋し予後の悪い遠隔転移をきたしやすい症例を区別することができれば臨床的意義は大きい.今回の甲状腺濾胞癌手術症例12例の検討では術後血中サイログロブリン(Tg)値が50μg/ml未満となることは遠隔転移を認めない因子であった.また著明な血管侵襲は有意な危険因子の可能性があり,血管侵襲が著明になるほど遠隔転移の頻度が高くなった.術後血中Tg値が50μg/ml未満とならない症例や血管侵襲が著明な症例では定期的な経過観察が重要で,経過観察中に血中Tg値の上昇する症例に対しては骨シンチグラフィ検査やPET-CT検査等で遠隔転移の検索を行い,遠隔転移巣が発見された場合には残存甲状腺全摘および131I治療等を可能な限り行うことが予後の改善に対して重要と思われた.