2011 年 72 巻 3 号 p. 647-651
症例は50歳,男性.高所より転落し頸椎を骨折.プレートによる頸椎前方固定術を施行.術後8年後よりプレートの転位とスクリューの脱落が生じ,精査にて頸部食道にプレートの露出を認め食道穿孔と診断した.このためプレート抜去および食道修復を施行した.手術は左前頸部斜切開にてアプローチし,食道内腔よりプレート抜去を行うも,食道周囲の癒着が激しく食道の剥離は困難であり,切開部にTチューブ留置,ドレナージ術を施行した.術後経過は良好であり,34病日に狭窄や瘻孔なく退院した.食道穿孔の治療は縦隔炎,瘻孔形成などにより難治性となることもあり種々の治療法が報告されている.また本症例のようなプレートによる不顕性,遅発性食道穿孔は極めて稀な合併症であり文献的考察を加え報告する.