2011 年 72 巻 3 号 p. 652-657
食道扁平上皮癌の小腸転移により腸閉塞をきたした1例を経験したので報告する.
症例は85歳男性.腹痛,腹部膨満を主訴として腸閉塞を発症し,胃切除後の影響による癒着性腸閉塞と診断し,先ず保存的治療を試みたが改善せず,開腹手術を施行した.術中所見では癒着は認められず,回腸に腫瘍が認められ,腸閉塞の原因病巣と診断した.術前より認められていた右側胸部の腫瘤に対し術中生検を施行し,小腸腫瘤に対しては小腸切除術を施行した.病理検査結果では右側胸部腫瘤,小腸腫瘤はいずれも高分化型扁平上皮癌であり,画像診断においても他に原発巣を認めないことより右側胸部腫瘤,小腸腫瘤はそれぞれ食道癌肋骨転移,小腸転移と診断した.食道癌の既往を有する患者の診療において腸閉塞などの消化器症状を認める場合には,病態として小腸転移も念頭に置くべきであると思われた.