日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔内遊離ガスを伴う非穿孔性腹膜炎を呈した気腫性膀胱炎の1例
竹林 克士河合 泰博田儀 知之松村 雅方清水 謙司佐藤 眞杉
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2011 年 72 巻 3 号 p. 782-785

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抄録

症例は68歳,女性.糖尿病と慢性排尿障害の既往があった.平成22年8月,腰部脊柱管狭窄症,脊髄空洞症にて当院整形外科に入院していた.同月,入院中に心窩部痛をきたし,精査したところ,腹部CT検査にて腹水と遊離ガスを認めた.また,膀胱壁にガス像を認め,気腫性膀胱炎も認めた.気腫性膀胱炎,消化管穿孔の疑いにて開腹術を行った.しかし,膀胱にやや握雪感は認めるも穿孔は認めず,消化管をはじめ,腹腔内に穿孔部位は認めなかった.腹腔内洗浄とドレナージのみを行い,手術を終了した.術後経過は良好で術後のCT検査では術前の所見は改善していた.
気腫性膀胱炎は本邦で60例の報告があるが,腹膜炎をきたしたものは3例であった.しかし,自験例のように膀胱の穿孔,破裂を伴わない腹膜炎の報告はない.病態としてはきわめて稀であると考えられるので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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