日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
創感染を伴った腹壁離開に対してシリコンディスク®を用いて2期的に閉鎖できた1例
濱田 哲宏谷口 英治吉川 正人太田 喜久子森山 裕煕大橋 秀一
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 72 巻 3 号 p. 786-790

詳細
抄録

手術後合併症として創部感染により腹壁全層離開が発生すると,早急な腹壁閉鎖が望まれるが,腹壁や脱出腸管の浮腫などのために一期的縫合閉鎖は困難である.今回,われわれは一期的縫合閉鎖不能な感染性腹壁全層離開症例に対し,シリコンディスク®を人工被覆材として用い,救命できた1例を経験した.症例は35歳男性で,左腎摘術を受け,術後創部MRSA感染により腹壁全層離開と腸管脱出および腸閉塞を起こしていた.シリコンディスク®を用いて腹壁仮閉鎖を行い,炎症の消退を待って二期的に腹壁縫合閉鎖を行った.シリコンディスク®とは,シリコンゴム膜周囲にフレキシブルリングを接着した構造で,腹腔鏡下手術時に術野の確保目的で開発された器材である.腹圧に耐えうる剛性を持つため,腹圧抑制処置が不要で,早期離床や経口摂取も可能であった.また,組織反応が少なく,第2期手術でこれを摘出することが極めて容易であり,優れた治療法であると考えられた.

著者関連情報
© 2011 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top