日本臨床外科学会雑誌
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症例
著明な乳糜腹水貯留を伴った小腸間膜脂肪織炎の1例
久保 慎一郎井谷 史嗣浅海 信也室 雅彦金 仁洙高倉 範尚重西 邦浩
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2011 年 72 巻 3 号 p. 801-805

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抄録

症例は60歳代,男性.2カ月前より腹部膨満感,食欲不振あり,初診となった.来院時,腹部膨満が認められるも,腹痛,発熱は認められず,CRPが軽度高値を示すのみであった.CT上,著明な腹水の貯留,胸水,膵体部付近から小腸間膜にひろがる炎症所見および膵下部の不整な腫瘤像が認められ,SMAを取り囲むように広がっていた.腹水穿刺にて腹水は乳糜,Sudan染色陽性,細菌培養陰性で,細胞診でも悪性所見は認められなかった.腹水中のCA125は異常高値であった.診断困難であり,確定診断および良悪性の鑑別のため,全麻下に小腸間膜腫瘤の切除生検を行った.腹水は乳糜で,癒着,易出血性が認められ,病理にてリンパ球浸潤のある線維性結合組織,肉芽,脂肪織炎が認められたが,悪性所見はなかった.大量乳糜腹水を伴う腸間膜脂肪織炎と診断し,ステロイド投与を行い,腹水の減量,炎症性腫瘤の縮小等,著明な治療効果が認められた.

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© 2011 日本臨床外科学会
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