2011 年 72 巻 7 号 p. 1799-1804
内臓悪性腫瘍の皮膚・皮下転移は比較的稀であり,中でも結腸癌原発例の報告は少ない.われわれは皮膚・皮下転移を契機に発見されたS状結腸癌の2例を経験した.症例1は50歳代女性で左背部皮下腫瘤を主訴に当院整形外科を受診した.MRIで周囲組織への浸潤があり,血中CEA高値とあわせ転移性皮膚腫瘍を疑い全身精査を施行したところ,S状結腸癌,皮下転移と診断した.S状結腸切除D2郭清を施行し術後補助化学療法を施行していたが術後1年で右副腎転移・下大静脈進展出現し術後1年8カ月で原病死した.症例2は70歳代女性で右大腿部に増大する発赤と硬結を認め,近医にて生検したところ転移性腺癌の結果であった.全身精査でS状結腸癌,皮膚・肝転移と診断した.腸管狭窄に対しステントを留置し緩和治療を行ったが,診断時より2カ月で原病死した.