2011 年 72 巻 8 号 p. 1964-1968
症例は39歳,男性.検診で5年前から,右胸部異常影を指摘されていた.右前胸部痛を主訴に当院を受診.胸部X線写真では,右下肺野を占める巨大な腫瘤影を認めた.胸部CTでは10×10cm大の縦隔腫瘍であると判断した.内部は比較的均一な低濃度の腫瘤影であり,心膜嚢胞を疑った.診断と治療を目的に3ポートの胸腔鏡下に手術を施行した.腫瘤は肉眼的に嚢胞性病変であると判断することができたが,緊満が強いために,切除する上での視野展開が困難であった.嚢胞壁の損傷による内溶液の散布を避けるべく,ピッグテールカテーテルを挿入して吸引した.視野展開が容易となり,胸腔鏡下に摘除しえた.病理組織学的に,悪性所見は認めなかった.術後の経過は良好であった.稀な巨大縦隔嚢胞であり,手術手技の工夫に関しての文献的な考察を交えて報告する.