抄録
症例は55歳,男性.平成13年8月に心窩部痛のため,胃内視鏡検査を施行し,胃角部に0-III型の胃癌が発見された.生検で低分化型腺癌と診断され,治療を勧めたが,自己都合により放置していた.平成20年9月,心窩部痛が増悪したため再受診し,胃内視鏡検査にて胃角部に約1.5cm大の潰瘍性病変を認めた.生検では,低分化型腺癌であった.上部消化管透視は胃角部後壁に約1.5cm大の中心陥凹を認め,周辺に約4cmのなだらかな隆起を認めた.腹部CT検査では胃角部の壁肥厚と少量の腹水を認めた.HpIgG 34U/mlで腫瘍マーカーはCEA 5.5ng/ml,CA19-9 4.5U/mlであった.平成20年12月幽門側胃切除を施行した.病理組織学的深達度はUI-IVsを合併したpT1(M)であった.背景粘膜は腸上皮化生を認め,粘膜下以深の著明な線維化を伴い,腫瘍細胞は再生上皮と混在して存在した.胃低分化腺癌で,初回診断から約7年放置後に根治手術が施行され,粘膜内癌と診断された症例は珍しく,若干の文献的考察を含め報告する.