日本臨床外科学会雑誌
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症例
肺小細胞癌膵転移の1例
野竹 剛中山 中竹内 信道辻本 和雄伊藤 憲雄高砂 敬一郎
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2011 年 72 巻 9 号 p. 2400-2404

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抄録

症例は65歳,男性.63歳時に肺小細胞癌に対して右肺上葉切除術が施行された.術後約1年3カ月後より血清ProGRP値の漸増を認め,局所再発および遠隔転移の検索目的にFDG-PETを施行したところ膵体部に2箇所の異常集積を認めた.腹部造影CTでは膵体尾部に2.0cmと1.5cmの境界明瞭で造影効果に乏しい腫瘤を認めた.以上より肺癌の膵転移と診断し,局所再発および膵臓以外への転移を疑う所見を認めなかったことから,膵体尾部切除術を施行した.切除標本には1cmと0.6cmの灰白色を呈する充実性の腫瘤を認めた.病理組織診断はsmall cell carcinomaで肺小細胞癌の膵転移に矛盾しなかった.膵切除後1年9カ月後に脳転移をきたし,3年6カ月後に永眠された.転移性膵腫瘍は一般的に予後不良とされ,腎癌からの転移以外では外科的切除の対象となるのはまれである.しかし本症例のように肺小細胞癌原発であっても積極的切除が予後の改善につながる可能性が示唆された.

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© 2011 日本臨床外科学会
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