2011 年 72 巻 9 号 p. 2442-2447
腹壁ヘルニアの中でも稀な疾患であるSpigelヘルニアに外鼠径ヘルニアを合併した症例に対してクーゲルパッチ(Bard社)を腹膜前腔に用いることで両ヘルニアを補修した.症例は66歳女性.左下腹部痛を主訴に当院受診.腹部CT検査にて腹直筋外側より突出する脂肪織の脱出を認め,Spigelヘルニアと診断し手術を行った.外腹斜筋腱膜を開くと腹膜前脂肪に覆われたヘルニア嚢を確認した.腹膜前腔の剥離時に外鼠径ヘルニアを偶然発見したため,同一創にて両ヘルニア嚢を高位結紮後クーゲルパッチにて一括に補修した.現在術後6カ月であるが再発なく外来通院中である.Spigelヘルニアの後天的要因として妊娠,腹圧上昇などが考えられており,鼠径ヘルニアの原因にもあてはまる.高齢化に伴い合併症例の増加も考えられ,術前・術中の詳細な検索が必要と考えられた.