日本臨床外科学会雑誌
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症例
Prolene Hernia System法で修復した上腹壁ヘルニアと傍臍ヘルニア併存の1例
上嶋 徳倉地 清隆中村 光一澤柳 智樹中村 利夫今野 弘之
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2011 年 72 巻 9 号 p. 2455-2459

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抄録

症例は高度肥満40歳女性で,心窩部から臍上部の圧痛を伴う腫瘤を自覚し来院.腹部CT検査で上腹壁と傍臍ヘルニアと診断し,還納後に待機的にprolene hernia system(PHS)法で同時に手術を施行した.上腹壁ヘルニア(白線ヘルニア)と傍臍ヘルニア(成人臍ヘルニア)は,腹壁ヘルニアに分類され,本邦では稀な疾患である.妊娠,高度の肥満,腹水貯留などの腹圧上昇が発生原因とされ,ヘルニア門径は比較的小さく,腸管嵌頓率が高く自然治癒しないため手術適応とされる.治療法として従来の単純閉鎖法では10%に再発を認め,再発率の改善と術後の疼痛軽減を考慮しProsthesisを用いた修復法が近年推奨されている.PHS法は成人鼠径ヘルニアに対するtension freeな修復法であるが,腹壁ヘルニアの成因から考えると,腹膜前腔と腹直筋前鞘を二重に広く補強が可能であり,かつ低侵襲な本法は,腹壁ヘルニア根治術に対して有用な方法のひとつと考えられる.

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© 2011 日本臨床外科学会
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