2012 年 73 巻 1 号 p. 116-120
症例は76歳,男性.悪寒戦慄を伴う発熱を主訴に当院救急センターを受診した.胆管炎の診断で消化器内科に入院となり,ENBDによる減黄と抗菌剤投与を行った.ENBD造影およびMRCPでは,B2・B3・B4の狭窄と末梢側の肝内胆管拡張を認めたが,明らかな腫瘤は認めなかった.胆汁細胞診より5回中2回class III bが検出されたため,胆管浸潤型肝内胆管癌と診断され手術目的で当科紹介となった.胆汁中から糞線虫も検出されたため,イベルメクチン経口投与による駆虫を行ったのち,肝左葉切除術を施行した.病理組織検査では,肝内胆管に表層拡大進展した上皮内癌を認めたが,胆管狭窄をきたすような浸潤癌は認めなかった.また,一部ではBilIN-1~2に相当する異型上皮を認めた.
今回,糞線虫による慢性胆道感染を伴い,浸潤癌様の狭窄所見を呈した上皮内肝内胆管癌を経験した.慢性胆道疾患とBilIN,発癌との関連を考える上で非常に興味深い症例と考えられた.