抄録
60代の男性,胸部食道癌(Mt,pT3N0M0)手術から2年9カ月後に急性腹症で救急外来を受診した.精査にて食道癌手術時に併設した空腸瘻に起因した腸閉塞,これに伴う十二指腸拡張および急性膵炎と診断した.血清アミラーゼ値は4,630IU/lと上昇していた.緊急手術で開腹し,空腸瘻を解除,空腸の瘻孔を縫合閉鎖し,膵周囲にドレーンを留置した.術後は順調に軽快し,第20病日に退院した.食道癌手術時の栄養瘻併設による栄養学的効果は明らかであるが,空腸瘻を造設した場合,術後長期間にわたって腸閉塞のリスクを持ち続けることになる.実際,当院では過去11年間で約3%の患者が空腸瘻造設に起因する腸閉塞で再手術を受けていた.食道癌手術時の栄養瘻併設の適応と方法を再検討させられた症例であり,文献的考察を加えて報告する.