2012 年 73 巻 1 号 p. 43-48
症例は76歳,男性.嚥下時のつかえ感を主訴に近医受診し,内視鏡検査で胸部食道に腫瘍を認めたため,当科へ紹介となった.生検による病理組織型は低分化型扁平上皮癌であり,白血球数は29,000,血清中granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)は167と上昇していた.外科的切除可能と判断し,2011年3月右開胸開腹胸部食道切除胃管再建術を施行した.pType2,11×8cm,pT3(AD),pN1,pStageIII,免疫染色で抗G-CSF抗体陽性であった.術後経過は順調で,白血球数およびG-CSFは正常範囲内となった.現在,術後補助化学療法を行っている.G-CSF産生の食道扁平上皮癌の報告例は自験例を含めて10例目であり,文献的考察を加え報告する.