2012 年 73 巻 1 号 p. 64-68
症例は58歳,女性.2009年11月中旬,発熱を主訴に当院救急外来を受診した.血液検査で炎症反応と肝胆道系酵素の上昇を認めたため腹部エコー・腹部造影CTを行ったところ,腹部中央に造影効果のある4×3cm大の腫瘤を認め,肝外側区域に3cm大の低吸収域を認めた.消化器内科に入院となり,小腸内視鏡検査で前者は小腸GISTが疑われ,後者は血液検査および画像所見から肝膿瘍が疑われたが,GISTの肝転移も否定できなかった.手術目的で当科紹介となり,同年12月下旬に腹腔鏡補助下小腸部分切除術と肝外側区域の病変の針生検を行った.病理検査の結果,小腸の病変はGISTと診断され,肝外側区域の病変は肝膿瘍と診断された.術後1カ月目に外来で行ったCTでは,肝膿瘍は痕跡程度となっており,ほぼ消失していた.肝膿瘍を合併した小腸GISTの報告は少なく,貴重な症例と考えられたため文献的考察を加えて報告する.