日本臨床外科学会雑誌
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症例
S状結腸閉塞にて発症し経肛門的ステント留置後切除した大腸同時8多発癌の1例
平川 富夫西原 政好島田 守権 五規李 喬遠岡 博史
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2012 年 73 巻 1 号 p. 91-96

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抄録

家族歴,既往歴のない54歳男性が便秘,腹部膨満感を主訴とし初診した.
腹部単純CT検査にてS状結腸腫瘍に伴う腸閉塞と診断した.同日緊急下部消化管内視鏡にて経肛門的に金属ステントを留置した.留置後,ただちに排便がみられ腸管内容減圧が得られた.十分な前処置の後,注腸造影を施行したところ回盲部,横行結腸に径約4cmの腫瘍が造影された.内視鏡下にステントの口側観察を試みたが,挿入不可能であった.結腸多発腫瘍と術前診断し大腸亜全摘術を施行した.病理組織では,S状結腸狭窄部はpSSで,狭窄部口側結腸に6病変,術前EMRした直腸1病変を含め,合計8病変の同時多発癌が認められた.左側結腸閉塞に対する内視鏡下経肛門的ステント留置術は経肛門的イレウスチューブと比較し,挿入後の患者のQOL維持に有効で,また口側腸管の精査に非常に有用である.大腸癌イレウス症例では,多発性を考慮し術前検査として可能なかぎり口側腸管を精査する必要がある.

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© 2012 日本臨床外科学会
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