2012 年 73 巻 10 号 p. 2504-2508
豊胸術後の乳癌は画像診断が困難である.豊胸術後の乳癌に対する診断方法を考える際に示唆に富む症例を経験したので報告する.症例は43歳女性,豊胸術が施行された2年後に左乳房腫瘤を自覚した.左乳房CA領域に5cmの腫瘤を触知するがマンモグラフィー(MMG)・エコー(US)では異物のアーチファクトで診断不可能であった.CTで乳腺膿瘍と診断し同部を摘出した.病理検査で標本の一部に乳癌を認めた.膿瘍摘出後にMRIを施行し乳癌を疑う腫瘍が描出されたため根治手術が施行された.異物注入後の乳房に乳癌が発生した場合,MMGやUSで癌を診断することは困難である.一方MRIは乳癌と異物の鑑別が可能で豊胸術後の乳癌の診断に有用である.画像で腫瘍を描出できないため生検部位を確定できず,また生検を施行しても偽陰性を示す危険性が高い.豊胸術後に乳癌の合併が疑われた場合,皮下乳腺全摘出術を考慮に入れた生検を行うべきである.