2012 年 73 巻 10 号 p. 2696-2701
大動脈浸潤が疑われる後腹膜腫瘍は診断が困難で,大動脈合併切除の適否についてのコンセンサスは得られていない.われわれは,大動脈浸潤を伴う後腹膜腫瘍に対し大動脈合併切除を行った稀な症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は42歳,男性.腰痛を主訴に近医を受診し,造影CTにて下腸間膜動脈起始部の腹部大動脈周囲に腫瘍を指摘され,当院を紹介受診した.生検に伴うリスクが高く術前に組織診断は施行できなかったが,CT,MRI,FDG-PETの結果は悪性腫瘍を強く疑う所見であったため,診断および治療目的に手術を行った.術中迅速病理検査で原発不明ながら転移性悪性腫瘍が強く疑われた.大動脈浸潤を認めたため,大動脈合併切除を伴う腫瘍切除を施行した.摘出標本の病理組織学診断はseminomaで,大動脈外膜への浸潤が認められた.周術期に特記すべき合併症は認めず,術後1年の経過観察では再発所見を認めていない.