2012 年 73 巻 10 号 p. 2691-2695
症例は70歳,男性.幼少時より左鼠径部に腫瘤を認め,増大傾向であったため当院を受診.腹部造影CTで左精索内に42mm大,その他最大100mm大の多発腫瘍を骨盤内,左腎下極脂肪識,左骨盤内腹壁下に認めた.診断目的に左精索内腫瘍を摘出し,病理組織学的検査でWell differentiated liposarcomaの診断となり,腹腔内および後腹膜多発脂肪肉腫摘出術を施行した.病理組織診断はWell differentiated liposarcoma,multiple,with a small nodule of dedifferentiated liposarcomaであった.術後8カ月の腹部造影CT検査で左腎下極脂肪識内に再発し,切除術を施行した.脂肪肉腫は軟部組織由来の非上皮性悪性腫瘍の一つであり,四肢や後腹膜に多いが,鼠径部(5.5%),陰嚢内(3.6%)にも発生すると報告されている.