日本臨床外科学会雑誌
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症例
右鼠径ヘルニア嵌頓で発症した大網原発デスモイド腫瘍の1例
高原 秀典永吉 直樹横山 正實光 章原 重雄
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2012 年 73 巻 10 号 p. 2710-2715

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抄録

症例は32歳,男性.右鼠径ヘルニアのためヘルニア修復術の予定であった.右鼠径部痛,右鼠径部膨隆,陰嚢腫大のため,救急車で緊急外来を受診した.CTではヘルニア内容は腸管でなく巨大な腫瘤もしくは血腫が疑われた.用手整復は不可能であったため,受診当日,緊急手術を行った.腹腔鏡下に右内鼠径輪に嵌頓した大網を確認したあと,鼠径部操作で大網に覆われた血腫を可及的に摘出し,ヘルニア修復術を行った.再度,腹腔鏡下で腹腔内に残存した血腫を摘出した.摘出標本の表面は平滑で弾性軟であり,割面が白色調の腫瘍部とその周辺に血腫を認め,大網と連続していた.病理組織学的検査では腫瘍は大網原発と考えられる腹腔内デスモイド腫瘍と診断された.腹腔内デスモイド腫瘍は稀な疾患であり,その多くは腹部膨満感や腹部腫瘤として発見されるが,本症例のようなヘルニア嵌頓をきたした報告例はみあたらないので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2012 日本臨床外科学会
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