2012 年 73 巻 10 号 p. 2716-2719
症例は66歳,男性.当院で早期S状結腸癌に対し腹腔鏡下S状結腸切除術を施行し,外来経過観察中であった.深夜より腹痛を訴え近医受診,腹部写真で腸閉塞と診断され当院救急搬送となった.腹部は緊満し圧痛を伴い,腹部造影CTでS状結腸の吻合部に接して拡張腸管を認め,内ヘルニアによる絞扼性イレウスを疑い同日緊急手術を施行した.開腹所見では血性腹水を認め,回腸が約60cmにわたりS状結腸間膜欠損孔より脱出し内ヘルニアとなっていた.脱出腸管に壊死を認め,腸管切除を行った.術後は第4病日まで発熱,炎症所見の遷延を認めたが,以後は問題なく経過し第16病日に退院となった.腸管の手術において,腸間膜は閉鎖するのが一般的と考えられていたが,腹腔鏡手術では手技が困難なこと等を理由に閉鎖されないことが多い.文献上も必要性は述べられているが,手技の難易度,内ヘルニア発症率を考慮する必要があると考えられる.