日本臨床外科学会雑誌
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症例
脾破裂をきたした脾原発悪性リンパ腫の1例
今枝 政喜橋本 瑞生小木曽 清二坂口 憲史石川 玲石坂 貴彦
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2012 年 73 巻 11 号 p. 2957-2962

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抄録

脾破裂をきたした脾原発悪性リンパ腫は,医学中央雑誌で検索した限りでは本症例が13例目である.症例は76歳,男性で,安静時に突然左側腹部痛が出現したため受診した.腹部造影CTで肝表面,脾周囲に液体貯留を認め,脾臓内部には最大径7cmの類円型腫瘤を認めた.腫瘤辺縁部には血管外漏出が示唆される高吸収域を認め,脾腫瘍の破裂による腹腔内出血と判断して,緊急IVRを行った.TAEを施行したが,検査所見,腹部所見からは止血が不十分であると判断して,翌日に緊急手術を行った.腹腔内には約2,500ccの血性腹水を認めた.脾上極の脾門部に被膜損傷と出血を認め,脾臓摘出術を施行した.腫瘍の割面は白色充実性腫瘍で,最大径は60mm,弾性硬であった.病理学的診断はnon-Hodgkin diffuse large B-cell lymphomaであった.術後経過は良好で,化学療法目的に転院し,術後15カ月無再発生存中である.脾臓内の悪性リンパ腫の増大により血管が破綻し血腫を形成し,血腫が増大したことで被膜が伸展され脾破裂が起こったと考えられる.

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