2012 年 73 巻 11 号 p. 2963-2968
直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行後22カ月目に脾臓に限局する多発性腫瘍が出現し,確定診断に苦慮した1例を経験した.症例は81歳男性で,Rb直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行し,外来で経過観察中だった.1年6カ月後に撮影したCTで脾臓に低輝度陰影の存在を指摘された.腫瘍の急速増大傾向が見られたことなどから脾臓摘出術が施行された.画像検査上はサルコイドーシスが最も疑われていたが,最終病理診断はDiffuse large B cell lymphomaだった.脾臓に腫瘤陰影が出現した症例が悪性疾患の既往を有していた場合,サルコイドーシス,悪性リンパ腫に加えて脾転移の可能性も考慮する必要があり,画像検査のみでは確定診断に至らないことも多い.その際は診断と治療を兼ねた脾臓摘出術を迅速に施行することが治療方針決定の上でも重要であると考えられた.