2012 年 73 巻 11 号 p. 2999-3002
症例は65歳,男性.左鼠径ヘルニアに対して他院でMesh plug法によるヘルニア修復術が施行されたが術後より腸骨鼠径神経領域の神経因性疼痛が出現した.保存的治療を行ったが6カ月経過しても疼痛は改善せず,当院を受診した.ヘルニア再発も認めヘルニア修復術と併せて神経因性疼痛に対する腸骨鼠径神経摘出術を施行した.術前に認められた神経因性疼痛は術後速やかに消失し患者のQOLは著しく改善した.近年,鼠径ヘルニアに対するメッシュ手術の普及に伴いメッシュ周囲の炎症・瘢痕化による神経のentrapmentによる神経因性疼痛が問題となりしばしば患者のQOL低下の原因となることがわかってきた.保存的治療で軽快しない場合に神経摘出など外科治療が奏効することがある.今回われわれは前方到達法によるヘルニア術後の神経因性疼痛に対して腸骨鼠径神経摘出術を施行し良好な経過を得たので報告する.