症例は78歳.男性.体重減少・貧血精査のため行われたCT検査で右上腹部に不均一に造影される10.5×5.7cmの腫瘍を認めた.胃内視鏡では粘膜面に異常を認めず,壁外性の圧排像のみであった.胃壁外発育性GISTを最も疑い開腹手術を施行した.腫瘍は胃原発ではなく,また周囲臓器への浸潤も認めなかった.最終的に膵臓前面との強い癒着を認めたが剥離可能であった.摘出腫瘍は表面平滑で膨張性に発育しており,病理組織学的には限局性悪性腹膜中皮腫の診断であった.
悪性腹膜中皮腫は比較的まれな疾患である上にびまん型がそのほとんどであり,本症例のような限局型は頻度が少ないとされている.しかし,切除例でも術後再発率が極めて高い上に効果的な化学療法も確立していないことから厳重な経過観察が必要であると考えられる.