抄録
症例は81歳,女性.胃癌に対する腹腔鏡下切除術の約半年後の腹部CT検査で,複数の傍大動脈リンパ節の腫大と下行結腸腫瘍を認めた.臨床症状の訴えは乏しかったが,高度の体重減少と低栄養状態であった.胸部CTや上部消化管内視鏡検査で異常なく,下部消化管内視鏡検査では,粗大隆起を密に伴う全周性病変により下行結腸は完全狭窄をきたしていた.注腸検査で回盲部病変を認めなかった.悪性リンパ腫や炎症性腸疾患などを念頭に置いたが,組織学的診断は得られず,全身状態の改善を優先し腹腔鏡下下行結腸部分切除術を施行した.術後病理学的に活動性腸結核と診断された.高齢化の進行する本邦では,潜在性結核の再燃が危惧されている.呼吸器病変を伴わない肺外結核症の早期診断は,特異な症状がなく困難なことが多いが,低栄養状態を伴う高齢者の腹部腫瘍においては,肺外結核症を考慮することが必要と思われた.