日本臨床外科学会雑誌
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症例
化学療法により完全寛解を認めた切除不能進行胃癌の1例
東田 正陽松本 英男西村 広健中村 雅史平井 敏弘
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キーワード: 進行胃癌, 化学療法, TS-1+PTX
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2012 年 73 巻 3 号 p. 581-587

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抄録

症例は71歳,女性.食欲不振と全身倦怠感のため来院し内視鏡で胃角から前庭部に3型進行胃癌を認めた.術前T4a,N2,M0,Stage IIIBと診断し開腹したが,十二指腸,膵臓への浸潤と肝十二指腸間膜への腹膜播種を認めた.T4b,N2,M1(PER),P1,CY0,Stage IVと診断し,幽門狭窄のため胃空腸吻合術を施行した.術後,TS-1+PTXの併用化学療法にて4サイクル終了後には,潰瘍性病変の消失と生検にて腫瘍細胞を認めなかった.しかし有害事象としてGrade 3の食欲不振,全身倦怠感を認め化学療法の継続が困難であった.追加治療として幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清を施行した.病理結果では,原発巣,リンパ節は瘢痕のみで明らかな腫瘍細胞を認めなかった.術後4年6カ月が経過しているが,無治療無再発生存中である.TS-1+PTX療法は通院で施行可能な化学療法として有効であった.

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© 2012 日本臨床外科学会
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