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中村 勇人, 久世 真悟, 京兼 隆典, 渡邉 克隆, 高木 健裕
2012 年73 巻3 号 p.
537-541
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は72歳,男性.多発肺転移を伴う再発大腸癌に対するmFOLFOX6療法を施行中に突然の呼吸困難が出現した.心電図では,V1-4で異常Q波とV3-5でSTの上昇およびT波の陰転化を認めた.心エコーでは,心尖部は広範囲でakinesisを呈し左室内腔の拡大を認め,左室駆出率は35%と著明に低下していた.たこつぼ様の形態を呈しており,たこつぼ型心筋症と診断した.利尿剤の投与で呼吸困難は改善し,発症後9日目の心エコーでは,心尖部の壁運動の改善により左室駆出率は50%と上昇した.近年,手術が誘因となり発症したたこつぼ型心筋症の報告例は散見されるが,化学療法施行中にたこつぼ型心筋症が発症した報告例は自験例を含め13例とまれであった.しかしながら,近年ますます積極的な化学療法が臨床に導入されつつある現状に鑑みると,化学療法の有害事象の一つとして,たこつぼ型心筋症を念頭に置くことが重要であると考えられた.
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斉藤 誠, 植田 宏治, 平井 俊一
2012 年73 巻3 号 p.
542-546
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
女性乳房に発生した稀な良性腫瘍である筋線維芽細胞腫の1例を経験した.症例は77歳,女性.右乳房の腫瘤を自覚され受診.右乳房上外側領域に弾性硬の腫瘤を触知した.超音波,ならびにマンモグラフィでカテゴリー3と判定,針生検で線維芽細胞系の腫瘍の一部が疑われたが確定診断には至らなかったため,後日摘出術を行った.腫瘤は径約2.5cm,境界は明瞭で組織学的に紡錘形~類円形の腫瘍細胞が膠原線維を伴いながら増殖,免疫組織化学ではvimentin,desmin,CD34が陽性,S-100蛋白,epithelial membrane antigen:(以下EMA)が陰性で筋線維芽細胞腫と診断された.文献的考察を加えて報告する.
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鶴原 知子, 申 智宏, 菅本 常夫, 湧谷 純
2012 年73 巻3 号 p.
547-551
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は60歳,女性.約4カ月で急速増大した右乳腺腫瘤を主訴に当科受診.来院時の腫瘍径は24cmで,肉眼所見・MRI・CTより悪性葉状腫瘍を疑い乳房切除術を施行した.術前検査にて所属リンパ節の腫大は認めず,間葉系腫瘍でのリンパ節転移の頻度は少ないため腋窩郭清は行わなかった.永久病理標本では,免疫染色により多方向への分化傾向を示す間質肉腫と診断された.乳腺の間質肉腫の報告はまれであり,未知の部分も多い.今回,20cm超の乳腺間質肉腫を切除後,局所含め再発兆候を認めず3年を経過した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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谷口 大輔, 谷口 英樹, 進藤 久和, 中崎 隆行, 佐野 功, 重松 和人
2012 年73 巻3 号 p.
552-556
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
乳腺原発扁平上皮癌は,乳管癌の扁平上皮化生から発生すると考えられている.今回われわれは,表皮嚢腫が発生母地と考えられた乳腺原発純粋型扁平上皮癌の1例を経験したので報告する.症例は79歳,女性.左乳房に3cm大の腫瘤を指摘され来院した.マンモグラフィでスピキュラを伴う腫瘤を認め,超音波検査では不整型の低エコー腫瘤を認めた.造影MRIでは,濃染する不整型の腫瘤がみられ,その中心部には壊死を思わせる,造影されない部分がみられた.針生検では,扁平上皮癌の診断であり,乳房部分切除術,腋窩リンパ節郭清を行った.病理組織診断では,腺癌の成分はみられず純粋型扁平上皮癌の診断であった.腫瘍の中心部には角質層を含む表皮嚢腫がみられ,表皮嚢腫が扁平上皮癌の発生母地となった可能性が示唆された.
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今井 敦, 長田 忠大, 小林 篤寿, 西川 眞, 後藤田 裕子
2012 年73 巻3 号 p.
557-562
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は60歳,女性.平成22年10月に左腋窩のしこりと痛みを訴え当科受診.左腋窩に3cmの硬い腫瘤を触知した.造影CTでは左胸筋下に第3肋骨に接する形で約4cmの造影効果のある辺縁整な腫瘤を認めた.経皮的針生検を施行し病理ではPAS陽性,ジアスターゼ抵抗性の顆粒を認め,S-100陽性で良性顆粒細胞腫の診断であった.11月に手術施行.左第3肋骨に接する形で存在していたが,浸潤はなく骨膜ごと剥離する形で摘出可能であり,術後5病日に退院した.摘出標本の病理所見にて部分的に核小体や核分裂像,血管侵襲を認めたため悪性顆粒細胞腫と診断された.現在術後1年だが再発所見は認めていない.顆粒細胞腫は全身の臓器に発生しSchwann細胞由来と考えられ治療は唯一外科的切除のみ有効である.今回われわれは胸壁原発の悪性顆粒細胞腫の1例を経験したので若干的文献的考察を含め報告する.
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國光 多望, 松原 寛知, 宮内 善広, 奥脇 英人, 蓮田 憲夫, 松本 雅彦
2012 年73 巻3 号 p.
563-567
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
Radiofrequency ablation(RFA)後の横隔膜ヘルニアに対して,胸腔側から横隔膜修復を施行した症例を経験したので報告する.患者は83歳女性.肝細胞癌にて当院の外来通院中に,突然腹痛,呼吸困難を認めた為救急搬送された.胸部X線写真で右胸腔に胸水と腸管ガス像を認め横隔膜ヘルニアと診断された.直ちに右胸腔ドレナージし,呼吸困難は消失,腸管壊死や腸閉塞は認めなかった.全身麻酔,分離肺換気下,右第8肋間開胸で横隔膜断端をフェルトで補強し,胸腔側から直接縫合で修復した.裂孔の直下に3年前にRFAで治療した肝病変を認め,RFAによる熱変性が横隔膜裂孔の原因と考えられた.胸腔アプローチは十分な術野を確保でき,脆弱で欠損の大きな横隔膜を安全,確実に修復する上で有用であると考えられた.
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久島 昭浩, 高橋 雅哉, 高橋 克之, 蜂須賀 仁志, 布村 眞季
2012 年73 巻3 号 p.
568-573
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は73歳,女性.急性膵炎および胆道感染で入院となった.上部消化管内視鏡検査で胃角部に壊死組織が突出している粘膜の隆起を認めた.内部が壊死に陥った粘膜下腫瘍と考え,幽門側胃切除術を施行した.病理組織診断の結果,xanthogranulomaを伴う膿瘍の診断であった.同時に摘出した胆嚢からもxanthogranulomaを認め,胆嚢炎から続発性に発生した胃壁膿瘍と判明した.胃壁膿瘍はまれな疾患であり,画像上では胃粘膜下腫瘍の像を呈する.近年では内視鏡下のドレナージや抗菌薬で治癒している報告もあるため,粘膜下腫瘍を疑う所見を認めた場合は胃壁膿瘍の可能性を検討する必要がある.
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後藤 裕信, 藤谷 和正, 平尾 素宏, 池永 雅一, 辻仲 利政
2012 年73 巻3 号 p.
574-580
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
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症例は76歳,男性.胃体下部大彎に0-IIc病変を認め,生検の結果は印環細胞癌であった.超音波内視鏡検査では多くは粘膜内病変であり,一部に粘膜下層への浸潤を認めた.腹部CT検査ではリンパ節転移および遠隔転移は認めなかった.早期胃癌(cT1bN0M0 Stage I A)に対して手術を予定していたが,初診日の約2週間後から腰痛が出現し,骨シンチグラフィーにて多発性骨転移を認めた.左鎖骨上リンパ節が10mm大に腫大しており,リンパ節生検の結果は印環細胞癌であった.免疫染色では,左鎖骨上リンパ節および胃病変ともにCytokeratin7(+),Cytokeratin20(+),napsin(-)であり,胃癌のVirchow転移と診断した.その後,播種性骨髄癌症からのDICを併発したが,緩和医療を選択され,初診後60日目に永眠された.早期胃癌にVirchow転移と播種性骨髄癌症が同時性に認められた本症例は極めて稀であると考えられ,文献的考察を加えて報告する.
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東田 正陽, 松本 英男, 西村 広健, 中村 雅史, 平井 敏弘
2012 年73 巻3 号 p.
581-587
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
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症例は71歳,女性.食欲不振と全身倦怠感のため来院し内視鏡で胃角から前庭部に3型進行胃癌を認めた.術前T4a,N2,M0,Stage IIIBと診断し開腹したが,十二指腸,膵臓への浸潤と肝十二指腸間膜への腹膜播種を認めた.T4b,N2,M1(PER),P1,CY0,Stage IVと診断し,幽門狭窄のため胃空腸吻合術を施行した.術後,TS-1+PTXの併用化学療法にて4サイクル終了後には,潰瘍性病変の消失と生検にて腫瘍細胞を認めなかった.しかし有害事象としてGrade 3の食欲不振,全身倦怠感を認め化学療法の継続が困難であった.追加治療として幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清を施行した.病理結果では,原発巣,リンパ節は瘢痕のみで明らかな腫瘍細胞を認めなかった.術後4年6カ月が経過しているが,無治療無再発生存中である.TS-1+PTX療法は通院で施行可能な化学療法として有効であった.
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平沼 知加志, 内田 恒之, 加藤 秀明, 俵矢 香苗, 渡邊 透
2012 年73 巻3 号 p.
588-591
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は56歳,女性.腹痛を主訴に当院紹介受診.著明な腹痛と炎症反応高値を認め,腹部CTで十二指腸下行脚の壁肥厚,周囲後腹膜気腫・液体貯留を認めた.十二指腸憩室の穿孔による後腹膜腫瘍を疑い緊急開腹手術を行った.上腹部正中切開にて開腹すると後腹膜・十二指腸の浮腫上変化を認めた.十二指腸の授動を行い下行脚に約3cm大の憩室と穿孔部位と内腔に結石を確認,周囲に膿瘍形成を認めた.結石による十二指腸憩室穿孔と診断,結石摘出し憩室切除,縫合閉鎖後大網を被覆,Cチューブ,経胃的に十二指腸に減圧チューブを留置した.術後は順調に経過し退院となった.CTの特徴的所見,および適切な処置が重要と考えられた.
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荒居 琢磨, 佐近 雅宏, 阿達 竜介, 三輪 史郎, 百瀬 芳隆, 澤野 紳二, 石井 恵子
2012 年73 巻3 号 p.
592-596
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
今回われわれはまれな空腸憩室穿孔の1例を経験したので報告する.症例は82歳,男性.主訴は左側腹部痛.2011年1月中旬より腹痛が出現したが,軽快しないため当科外来を受診した.腹部診察上,左側腹部に圧痛および反跳痛があり,腹部CT検査所見では腹腔内にfree airと小腸周囲の限局的な脂肪織の濃度上昇を認めた.消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した.Treitz靱帯より20~60cm肛門側の上部空腸に多発する憩室を認め,そのうち最大のものが穿孔をきたしていたため,憩室を含めた空腸楔状切除術および腹腔ドレナージ術を施行した.病理組織学的検査では空腸仮性憩室の穿孔と診断された.術後経過は良好であり,第10病日に退院となった.空腸憩室穿孔はまれであり,術前診断の困難であるとされるが,術前画像診断上小腸周辺に限局する所見であった場合,本疾患も念頭に置き治療にあたる必要があると考えられた.
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池辺 孝, 眞弓 勝志, 濱野 玄弥, 堀 高明, 竹村 雅至
2012 年73 巻3 号 p.
597-602
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
患者は47歳,男性.腹痛と嘔吐を主訴に来院した.腹部単純CTで右下腹部の小腸内に直径1.5cmの石灰化陰影と小腸の拡張および液体貯留を認めた.イレウスと診断,イレウス管を挿入し入院となった.イレウス管挿入4日目に腹腔鏡補助下に手術を行った.回腸終末から40cm口側の腸間膜対側に根部に輪状の狭窄を伴う母指大のMeckel憩室を認めた.憩室の先端が盲腸と癒着してループを形成,回腸が陥入し内ヘルニアとなっていた.輪状狭窄を含めて憩室を根部で切除しイレウスを解除した.腸管切除は行わなかった.憩室の内腔に直径1.5cmの結石を認めた.結石分析では99%シュウ酸カルシウムであったため真性腸石と診断した.憩室は病理検査上,真性憩室で異所性粘膜は認めなかった.Meckel憩室に真性腸石を伴うことはまれで,自験例では憩室根部の狭窄により憩室内に腸液の鬱滞が生じ,結石形成の原因となったものと推測された.
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塙 秀暁, 小笠原 康夫, 加納 恒久, 名取 穣治, 内山 喜一郎, 鈴木 英之
2012 年73 巻3 号 p.
603-607
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は22歳,男性.食後3時間での急激な腹痛・嘔吐を主訴に受診した.造影CTにてwhirl signを認めた.腸間膜は広範に強い浮腫状変化を呈し,上腸間膜静脈の怒張を認めた.小腸軸捻転による絞扼性イレウスの診断で同日緊急手術を施行した.腹腔内に中等量の乳び腹水を認めた.小腸は上腸間膜動脈起始部で反時計回りに270~360度捻転していた.Treitz靱帯から90cm~660cmまでの小腸間膜は白色調で著明な浮腫により肥厚していた.腹腔内を検索したが原因疾患は認めず,原発性小腸軸捻転による絞扼性イレウスと診断した.捻転を用手的に解除したところ腸管の虚血や壊死は認めなかったため腸切除は施行せずに閉腹した.術後経過は良好で術後9病日で軽快退院となった.退院1カ月後の造影CT,腹部超音波検査では腸間膜の浮腫は改善しており,原発性の小腸軸捻転と確定診断した.成人発症の原発性小腸軸捻転で乳びを伴う例は非常にまれで過去に4例の報告があるのみである.
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河野 竜二, 高濱 哲也, 上釜 勇, 今村 勝洋, 菰方 輝夫
2012 年73 巻3 号 p.
608-612
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は52歳,女性.貧血と便秘の精査目的で内科受診.CT検査で骨盤内正中に12×8×13cm大の巨大な腫瘤と空腸近位部に内腔の狭小化を伴う4.5cm大の腫瘤を認め,肝両葉と両肺に多発転移巣を認めた.上下部消化管精査では腫瘍性病変は認めなかった.腫瘍マーカーはCEA 300ng/ml,CA125 10.5U/ml,CA19-9 76,800U/mlであった.術前診断で原発巣が卵巣か小腸か鑑別できなかった.精査中に腹腔内出血をきたしたため緊急手術となり,小腸部分切除,右卵巣腫瘍切除術施行した.免疫組織検査で小腸,卵巣病変ともにCDX2陽性,CK7陰性,CK20陽性であったため小腸原発と診断した.今回われわれは卵巣腫瘍との鑑別診断が非常に困難であり,最終的に免疫組織学的診断が有用であった1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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佐藤 力弥, 川村 武, 佐々木 邦明, 野口 忠昭, 細野 知宏, 池上 雅博
2012 年73 巻3 号 p.
613-617
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
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大腸脂肪腫は比較的稀な疾患だが,内視鏡検査の普及に伴い報告例が増えている.今回われわれは腸重積をきたした横行結腸巨大脂肪腫に対し外科的切除を施行した1例を経験した.症例は73歳,女性.間欠的な左下腹部痛を主訴に受診した.下部消化管内視鏡検査では下行結腸にびらんを伴う粘膜下腫瘍を認め,基部が口側腸管を引き込んでおり深部への挿入はできず.腹部CTでは脂肪濃度の腫瘤が描出され,横行結腸脂肪腫が下行結腸に引き込まれて腸重積をきたしていた.治療は開腹にて横行結腸部分切除術を行った.腫瘤は最大径83mm大,亜有茎性の粘膜下腫瘍で,病理組織学的には大小不同の成熟した脂肪細胞の増生を認め大腸脂肪腫と診断された.腸重積をきたした大腸脂肪腫に関する本邦での報告は,自験例を含めて26例と比較的稀であり,症例報告に文献的考察も加えた.
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柴崎 泰, 横井 佳博, 金子 猛, 綿引 洋一
2012 年73 巻3 号 p.
618-625
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例1は85歳,男性.腹痛を主訴に受診.腹部CT検査でS状結腸に腸重積を疑った.横行結腸の1型腫瘍が先進部となりS状結腸へ順行性に重積していた.横行結腸切除術を施行し,病理組織学的検査で大腸未分化癌と診断された.症例2は82歳,男性,下血を主訴に当院紹介受診.腹部CT検査でS状結腸に同心円状に造影される腫瘤を認め,待機的に手術を施行した.S状結腸の1型腫瘍が順行性に重積していた.S状結腸切除術を施行し,病理組織学的検査で大腸未分化癌の診断となった.大腸未分化癌は本邦で21例を集計したが,男性に好発し,高度な局所進展と転移を呈し,予後は不良である.それらのうち重積を呈したのは本例を含めて3例のみであった.全例が高齢の男性で,S状結腸または横行結腸の大型隆起型腫瘍であったが,未分化癌に特徴的な術前検査所見は見いだされなかった.臨床的特徴あるいは病態については,さらに症例を重ねた検討が必要である.
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永井 雄三, 丸山 常彦, 酒向 晃弘, 上田 和光, 奥村 稔
2012 年73 巻3 号 p.
626-631
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は64歳,女性.上行結腸癌に対し結腸右半切除+D3郭清を行い,再建をCircular Staplerを用いた器械式端側吻合で施行した.病理結果は上行結腸癌pType2 5×6cm,tub2,pSS,pN2(7/33),ly1,v2,pH0,pP0,pM0,pStage IIIbであり,術後補助化学療法Capecitabine8コースを施行した.術後20カ月時に高度の貧血で入院.下部消化管内視鏡検査で前回吻合部は正常であったが,Linear staplerで閉鎖した結腸の盲端に不整な隆起性病変を認め,盲端再発と診断し再切除術を施行した.盲端内に4cm大の再発腫瘍を認め,腫瘍は回腸の一部に浸潤・穿通し,また小腸間膜リンパ節転移を認めた.初回手術時の切離断端は癌陰性であり,implantationによる再発と考えられるが盲端再発の報告は少ない.文献的考察を加えて報告する.
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田畑 信輔, 出口 正秋, 石田 誠, 恩地 英年, 戸川 保, 大槻 忠良
2012 年73 巻3 号 p.
632-637
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は59歳,男性.下腹部痛,腹部膨満を主訴に受診し,S状結腸癌による閉塞の診断となり当院入院,経肛門的イレウス管留置にて減圧処置とした.イレウス管留置後,敗血症ショック,急性腎不全,心不全合併したが,保存的治療にて軽快した.入院時の血液検査にてCEAが74.4ng/mlと高値を示し,結腸癌による上昇と判断していたが,全身状態,虚血性腸炎改善後の再検査にて1.9ng/mlと低下を認めたため,閉塞性大腸癌に合併した虚血性大腸炎による一過性のCEA上昇と判断した.
S状結腸癌に対し腹腔鏡補助下S状結腸切除を施行し,吻合後の術中下部内視鏡検査にて吻合部口側の下行結腸全体に縦走する浅い潰瘍,びらんを認め,切除標本にも一部同様の所見を認めた.病理結果も虚血性変化に矛盾しない組織像であった.
今回われわれはS状結腸癌に一過性の高CEA血症を示す虚血性大腸炎を合併したまれな症例に経験したため,若干の文献的考察を加え報告した.
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松井 祥治, 佐藤 美晴, 村尾 眞一
2012 年73 巻3 号 p.
638-642
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は68歳,男性,2006年9月頃から全身倦怠感が出現し近医を受診,血液検査で高γグロブリン血症を指摘され同年10月当院内科を紹介された.血中IgG 4,420mg/dlと高値を示し尿検査でもIgGのモノクローナルな増殖を認め,多発性骨髄腫と診断された.同時に下血も持続するため上部・下部消化管精査施行,S状結腸癌と診断され11月S状結腸切除術を施行した.退院後多発性骨髄腫に対してメルファラン+プレドニン療法(以下MP療法と略す)を施行した.その後大腸のfollow upで盲腸に早期癌が発見され,2009年2月endoscopic mucosal resection(以下EMRと略す)を施行したが一部腫瘍残存が疑われ,同年3月回盲部切除術を施行した.さらに2011年4月直腸(RS部)に早期癌が発見され,同年5月直腸前方切除術を施行した.多発性骨髄腫は他の悪性腫瘍と合併する頻度が高く,本症例のごとく3重性の大腸癌もあることから,消化管などの厳重なfollow upが必要であると考えられる.
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白崎 圭一, 片寄 友, 石田 和之, 松村 直樹, 江川 新一, 海野 倫明
2012 年73 巻3 号 p.
643-647
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
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症例は50歳,女性.診断は下行結腸癌同時性肝転移でS2に3.6cm,S5に6.5cmの切除可能と考えられる同時性肝転移を認め,まず原発巣を切除した.その後mFOLFOX6+ベバシズマブによるネオアジュバント化学療法を8コース施行した.術前CTによる奏効率はRECISTversion1.0でPRであり,外側区域切除術,肝部分切除術(S
45)を施行した.S
5の肝転移は病理学的に壊死組織を呈し,癌の遺残は認めず,大腸癌取扱い規約に基づく組織学的効果判定基準Grade3で,長径6.5cmの腫瘍がネオアジュバント化学療法8コース後に病理学的CRとなった.
長径6.5cmでの腫瘍で著効が得られたことから,分子標的治療薬を含むネオアジュバント化学療法で根治率の向上が期待でき,大腸癌肝転移症例に対する切除適応拡大の可能性を示した貴重な症例と考えられた.
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久保 孝文, 泉 貞言, 徳毛 誠樹, 治田 賢, 吉田 修, 鈴鹿 伊智雄
2012 年73 巻3 号 p.
648-653
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
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症例は70歳,女性.舌癌術後の定期検査のMRI検査で肝外側区域に直径約3cm大の腫瘤を指摘された.ダイナミックMRI検査ではT1強調画像で早期より濃染し,平衡相まで造影効果が遷延していた.またT2強調画像では高信号であった.経皮肝生検を施行し免疫染色にてHMB45染色が陽性であったため肝血管筋脂肪腫と診断した.その後も短期間に増大したため,手術適応と判断し,腹腔鏡下に肝部分切除を施行した.摘出標本は直径2cm大の黄褐色の腫瘤で,病理学的にHMB45染色などで肝血管筋脂肪腫と最終診断された.術後経過良好で術後9日目に退院した.経皮生検で診断後も短期間に増大したため切除した肝血管筋脂肪腫の1例を経験したため報告する.
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和田 幸之, 高見 裕子, 立石 昌樹, 龍 知記, 桃崎 征也, 才津 秀樹
2012 年73 巻3 号 p.
654-658
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は77歳,男性.C型肝炎にて近医で経過観察されていた.2005年に肝内腫瘍を認めるも造影効果がなく境界病変が疑われ経過観察されていたが,2006年9月に増大傾向を示したため,当科紹介となった.肝S7:40mm,S6:35mm,S3:10mmの3個の造影効果を伴わない不整型の腫瘍とS6:15mm,S7:20mmのCT所見上,典型的な肝細胞癌を認めた.術前診断にて造影効果を認めない3個の腫瘍はMRIのT2強調像で高信号を示し,ブドウの房状を示す低エコー腫瘍として描出され,その特異な形態からも悪性が疑われ,手術を施行した.病理組織学的には造影効果を認めない腫瘍は紡錘細胞で構成されるも免疫組織学的に上皮性成分が混在する腫瘍であり,肉腫様肝癌と診断された.その他の2個の腫瘍は中分化型肝細胞癌であった.特徴的な超音波像が確認された症例であり,また,肉腫様肝癌が発生早期から肉腫化することを示唆する症例と思われたため,若干の文献的考察を含め報告する.
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中村 祥子, 原 隆志, 後藤 剛
2012 年73 巻3 号 p.
659-662
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
フリー
症例は72歳,女性.1993年胆嚢内結石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下LC)が施行された.術後は著変なく順調に経過していたが術後15年経過した2008年,高血圧症に対する定期検査にて総ビリルビンの軽度高値を認めたため精査目的に入院となった.腹部超音波検査にて総胆管の拡張と胆管結石を認め,腹部造影CTでは同様に総胆管の拡張と金属クリップが胆管壁を貫いて結石の中央部に刺さる様に認められ,クリップ迷入による総胆管結石症と診断,総胆管切開切石+T-tubeドレナージ術を施行した.LCの普及に伴い胆管クリップ結石の報告が散見されるようになった.金属クリップを使用した場合には本例のように術後長期経過からの発症も稀ではあるがみられるため十分注意を払う必要がある.また,近年ではクリップによる合併症を防ぐために様々なデバイスが開発されており,可能であればこれらを利用したクリップレス手術が望ましいと考えた.
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本田 晴康, 津澤 豊一, 川田 崇雄, 熊谷 嘉隆
2012 年73 巻3 号 p.
663-667
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
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肝内胆管狭窄は比較的稀な病態で術前の良悪性の鑑別はしばしば困難である.今回われわれが経験した症例は膵頭部癌の既往がある73歳の男性で,CA19-9が3,321U/mlと異常高値を呈し,MRIで肝左葉外側区域B2に限局した拡張があり,B2根部背側にT2強調画像で淡い高信号域が認められた.FDG-PETでも腫瘤部に一致して異常集積が認められた.肝内胆管癌が否定できず,手術(肝左葉外側区域切除)を施行したが,切除標本には悪性所見はなく,胆管壁は狭窄部拡張部ともに線維化が著明で,高度のリンパ球や形質細胞浸潤を伴う部分があり,免疫染色でIgG4陽性形質細胞が有意に出現していたことよりIgG4関連硬化性胆管炎による胆管狭窄と診断された.術後4カ月でCA19-9は正常化.術後4年現在,再燃なく経過している.肝内胆管狭窄症およびIgG4関連硬化性胆管炎の治療について文献的考察を行い報告する.
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沖本 将, 漆原 貴, 池田 聡, 眞次 康弘, 中原 英樹, 板本 敏行
2012 年73 巻3 号 p.
668-672
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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陶器様胆嚢とは,胆嚢壁の広範な石灰化により外観および硬度が陶器様に変化した病態と定義され,胆嚢癌の合併が問題となっている.今回われわれは全体型陶器様胆嚢に対して単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を行ったので文献的考察を加えて報告する.
症例は75歳女性.以前より陶器様胆嚢を指摘され経過観察されていた.右上腹部痛が頻発するようになり,手術適応とされ当科紹介となった.術前検査で癌の合併が極めて稀な全体型陶器様胆嚢と診断し,単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.手術時間は161分,出血量は12gであった.摘出胆嚢は病理組織学的に悪性所見を認めず,術後7日目に軽快退院した.術前検査で癌合併の極めて稀な全体型陶器様胆嚢では腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応であり,様々な工夫を行うことで単孔式でも安全に施行可能であった.
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荒川 和久, 小川 哲史, 安東 立正, 富澤 直樹, 須納瀬 豊, 竹吉 泉
2012 年73 巻3 号 p.
673-676
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は85歳,男性.閉塞性黄疸を契機に下部胆管癌と診断され,手術目的に当院に紹介となった.術前の腹部CT検査所見では総肝動脈が上腸間膜動脈から分岐する肝腸間膜動脈幹の変異があり,総肝動脈は膵頭部実質内を走行していた.腫瘍と総肝動脈とは離れており,総肝動脈を温存しても根治性は保たれると判断し,膵実質から動脈を剥離,温存しながら膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的には腺内分泌細胞癌であった.肝動脈の変異は多く,膵頭部領域の手術の際には,手術の根治性と肝血流の維持を考慮しなければならない.術前画像検査で解剖を詳細に把握することが,手術を安全に施行し,術後合併症を予防する上で重要であると考えられた.
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佐々木 勇人, 小貫 学, 進藤 吉明, 齋藤 由理, 田中 雄一, 鈴木 敏文
2012 年73 巻3 号 p.
677-680
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は58歳,女性.吐血を主訴にショック状態で救急搬送された.緊急上部消化管内視鏡で胃体下部後壁にForrest IIb潰瘍を認めた.多量の血腫を認め,動脈性の出血と考えられたが,膵臓への穿通が疑われclippingは行わなかった.腹部CTで脾動脈瘤の胃穿破と診断し,緊急IVRとなった.脾動脈瘤に対してコイル塞栓を行い止血した.脾動脈瘤の中でも胃に穿通する例は稀である.
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藤田 優裕, 播本 憲史, 梶山 潔, 祇園 智信, 由茅 隆文, 長家 尚
2012 年73 巻3 号 p.
681-684
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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われわれはメソトレキセート(MTX)使用中の慢性関節リウマチ患者に発生した極めて稀なEpstein-Barr virus(EBV)関連脾臓原発悪性リンパ腫に対して,用手補助腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した1例を経験したので報告する.症例は80歳の女性で,約1年間MTXを内服中,2週間続く倦怠感と3日間続く39度台の弛張熱を主訴に受診した.左季肋部に叩打痛を認め,造影CTにて脾臓に多発する低吸収域を認めた.脾膿瘍を疑い抗菌薬,抗真菌薬投与にて経過を見たが,発熱が持続したため第7病日に用手補助腹腔鏡下脾臓摘出術を行った.脾臓割面には多発する白色結節を認め,病理組織学的所見はdiffuse large B-cell lymphomaで,EBER(EBV encoded small RNAs)陽性でありEBV関連脾臓原発悪性リンパ腫と診断した.
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長谷 諭, 三好 信和, 片山 晃子, 田原 浩, 布袋 裕士, 前田 佳之, 佐々木 なおみ
2012 年73 巻3 号 p.
685-688
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は65歳,女性.13年前,乳癌手術前のCTで右副腎に腫瘤を指摘された.血液生化学,内分泌学的検査は正常だった.CTで径2.5cm大の内部に脂肪成分を含んで不均一な境界明瞭平滑な腫瘤を認めた.良性腫瘍が考えられたため経過観察を行った.3年後のCTで腫瘍径が3cmと増大した.MRIではT1およびT2強調像で不均一な高信号を呈する腫瘤だった.CTガイド下生検を行い骨髄脂肪腫と確定診断した.その後も徐々に増大がみられ,10年後に腫瘍径7cmとなり腹腔鏡下右副腎摘出術を施行した.腫瘍は表面平滑で,組織学的に副腎骨髄脂肪腫と診断した.術後経過良好で術後5日目に退院した.副腎骨髄脂肪腫は非機能性良性腫瘍であり治療選択が問題となる.経皮的生検の後に経過観察を行った報告は散見されるが13年もの長期に経過観察した報告はなく,また7cm大に増大し最終的に手術に至った貴重な症例と考えられ,文献的考察を加えて報告する.
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金井 俊平, 中村 誠昌, 杉山 朋大, 長門 優, 谷口 正展, 下松谷 匠
2012 年73 巻3 号 p.
689-692
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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今回われわれは妊娠中に発見され,画像検査から術前にtailgut cystを強く疑った1例を経験したので報告する.症例は30代女性で妊娠経過観察中の経膣超音波検査で骨盤内腫瘤を指摘された.自覚症状はなく,直腸指診で直腸後壁に弾性軟の腫瘤を触知した.出産後に施行した骨盤CTおよびMRI検査で直腸後面に境界明瞭,内部は均一な嚢胞性腫瘤を認めた.画像所見より術前からtailgut cystを疑い経仙骨的に腫瘤を摘出した.腫瘤は8×5.5×5cmで表面平滑,内腔に淡黄乳白色,クリーム状の液体を認めた.術後の組織学的所見より,tailgut cystと診断した.Tailgut cystは報告例も少なく,疾患概念が浸透していない.しかし約10%に悪性例があるため,術前から本疾患を念頭におき,適切な術式を選択することは重要である.
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山口 哲司, 齊藤 文良, 小島 淳夫, 山下 巌, 桐山 誠一, 塚田 一博
2012 年73 巻3 号 p.
693-698
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は39歳,男性.半年前から腹囲の増大を自覚していた.数日前より続く右下腹部痛を主訴に当院外来を受診した.腹部手術や外傷の既往はなく,家族性大腸腺腫症の既往歴や家族歴もなかった.精査において右下腹部を中心とする約25cm大の腫瘤を認め,同時に両側肺血栓塞栓症を伴う,下肢深部静脈血栓症が指摘された.呼吸,循環動態は安定しており,腹部症状は比較的軽度であったため手術に先行して抗凝固療法を開始した.腹腔内腫瘤は回盲部由来の間葉系腫瘍が疑われた.深部静脈血栓症は残存するものの,肺血栓塞栓症が縮小したことを確認し,回盲部切除で腫瘍を摘出した.摘出腫瘍は長径27cm,重量4,840gのデスモイド腫瘍であった.術後は合併症なく経過し退院した.今回,われわれは診断時に無症候性の静脈血栓塞栓症を伴った巨大腹腔内デスモイド腫瘍の1例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.
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西野 豪志, 片山 和久, 高橋 裕兒, 田中 隆
2012 年73 巻3 号 p.
699-704
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は65歳,女性.臍下方の無痛性皮下腫瘤を主訴に当院を受診した.初診時の血液検査でCA125の高値を認めた.CT,MRI検査で臍下方の皮下から腹腔内に至る50mm大の分葉状腫瘤を認め,さらに上行結腸背側や大網,骨盤底にも多発する結節性病変を認めた.子宮卵巣には明らかな異常を認めなかった.FDG-PET検査では,臍下方にSUVmax 12.6の強い集積を認め,腹腔内にも強い集積を伴う腫瘤を多数認めた.腹壁腫瘤の穿刺吸引細胞診でClass Vと診断されたが原発の特定は困難であり,手術を施行した.腹壁腫瘤を切除し,開腹したところ,播種結節が上行結腸に浸潤していたため結腸右半切除術を行い,腹腔内の播種結節を可及的に切除した.病理組織学的検査で腫瘍細胞の乳頭状増殖を認め,腹膜原発漿液性乳頭状腺癌と診断された.術後化学療法(TC療法)を行い,術後6カ月現在,再発なく生存中である.
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高地 良介, 戸倉 夏木, 島田 長人, 上田 一夫, 中野 太郎, 高塚 純
2012 年73 巻3 号 p.
705-708
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
ジャーナル
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症例は47歳,男性.2010年3月に腹部膨満感,両下肢から陰嚢までの腫脹を認め,その後右側腹部から背部の疼痛が出現したため,当院外科受診.各種画像検査にて腹腔内全体を占拠する巨大腫瘤を認め,腹腔穿刺による生検結果にてmalignant fibrous histiocytoma storiform-myxoid typeの診断を得た.2010年7月に手術施行.腫瘍は内腔に液体を有する多数の隔壁構造を有し,腹腔内全体を占拠していた.消化管と右腎臓は脊椎の左側に圧排されていた.腫瘍は分割して摘出したが,肝右葉下面と後腹膜に接する部分は浸潤による癒着が強固なため,一部摘出できなかった.6.2kgの腫瘍組織を摘出したところ,消化管は通常の位置に戻った.術後の病理組織学的検査にて,myxoid~pleomorphic MFHと診断された.後腹膜由来の巨大なMFHは,本邦では稀であり文献的考察を加え報告した.
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藤井 武宏, 須崎 真, 大倉 康生
2012 年73 巻3 号 p.
709-714
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は76歳,男性.数日前より出現した心窩部痛,発熱と嘔吐を主訴に当院を受診した.初診時の身体所見では右鼠径部から右陰嚢にかけ圧痛を伴う約25cm大の腫瘤を認めた.腹部は軽度に膨満しており,心窩部に軽度の圧痛があったが,腹膜刺激症状は認められなかった.腹部CT検査にて嚢内に小腸と脂肪組織を含んだ巨大な右鼠径ヘルニアがみられ,腹腔内では小腸の拡張が認められた.小腸が嵌頓した右鼠径ヘルニアと診断し,緊急手術を施行した.鼠径部アプローチにて手術を開始したが,ヘルニア嚢を切開したところ膿性腹水の噴水様流出を認め,ヘルニア嚢の内容は大量の大網,80cm長の小腸,盲腸の一部と著明な炎症所見を呈して穿孔をきたした虫垂であった.創外にて虫垂切除をした後,iliopubic tract repairを施行した.術後経過は良好で術後9日目に退院となった.鼠径ヘルニア嚢内に虫垂が認められるAmyand's herniaは稀な疾患である.自験例と本邦報告の35症例を集計し,文献的考察を加えて報告する.
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大島 稔, 森 誠治, 因藤 春秋, 前場 隆志, 鈴木 康之
2012 年73 巻3 号 p.
715-719
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は96歳,女性.右側腹部痛を主訴に当科を受診し,精査で閉塞性イレウスと診断された.右側腹部に弾性軟である腫瘤を触知し,CTで盲腸の周囲に拡張した小腸を認めた.イレウス管を挿入し,保存的加療を試みるも症状は改善しなかったため,入院後6日目に開腹下でイレウス解除術を行った.手術既往歴がなかったため,術前は内ヘルニアを疑っていた.術中所見で上回盲窩型盲腸周囲ヘルニアによる小腸嵌頓と診断し,嵌頓した小腸を整復解除し上回盲窩のヘルニア門を縫合閉鎖した後,一部絞扼に陥っていた小腸を部分切除した.盲腸周囲ヘルニアはまれな疾患であり,自験例のように術前診断に苦慮することが多いとされているが,イレウスの原因腸管を盲腸周囲に認めた際には本疾患を鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要があると考えられた.若干の文献的考察を加えて報告する.
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浅沼 修一郎, 寺崎 正起, 岡本 好史, 田中 顕一郎, 鈴村 潔, 神谷 忠宏
2012 年73 巻3 号 p.
720-724
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は83歳,女性.2011年3月,右下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部CTで,右梨状筋下孔に小腸が嵌頓し,イレウスを呈していた.右坐骨ヘルニア嵌頓と診断し,同日緊急手術を施行した.開腹すると,右坐骨孔に小腸がRichter型に嵌頓しており,用手的に嵌頓を解除した.嵌頓腸管に虚血性変化は認められなかったため,腸管切除を施行せず,ヘルニア門を単純縫合により閉鎖し,手術を終了した.術後経過は良好で,術後6日目に退院した.
坐骨ヘルニアは,坐骨孔すなわち大坐骨孔もしくは小坐骨孔をヘルニア門としたヘルニアである.坐骨ヘルニアによるイレウスは非常に稀な疾患であり,検索しえた限り本邦での報告は自験例を含めて7例であった.文献的考察を加えて自験例を報告する.
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三輪 知弘, 堀 明洋, 森岡 淳, 河合 清貴, 松葉 秀基, 松村 卓樹
2012 年73 巻3 号 p.
725-729
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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症例は73歳,女性.2008年12月に左大腿内側の疼痛を主訴に当院を受診した.CT所見より左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,全身麻酔下に緊急手術を施行した.手術は開腹アプローチで行い,左閉鎖孔ヘルニアに対してメッシュプラグを使用して修復術を施行した.術後経過良好で退院したが,初回手術から23日後,右大腿内側の疼痛を主訴に,再度当院を受診した.CTで右閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した.左側と同様,全身麻酔下,開腹アプローチで手術を行い,メッシュプラグを使用してヘルニアを修復した.術後に初発時のCTを見直してみると,右側に潜在性の閉鎖孔ヘルニアの存在を示唆する所見を認めた.
本症例のような両側異時性閉鎖孔ヘルニア嵌頓の報告例は少ない.しかし,その解剖的特性から閉鎖孔ヘルニアは潜在的に両側性である可能性が指摘されており,初回手術時の対側への注意と処置の必要性が問題となる.
本症例について若干の文献的考察を加え,当院における過去9年間の14例の症例検討と併せて報告する.
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浅桐 公男, 疋田 茂樹, 古賀 義法, 深堀 優, 田中 芳明, 八木 実
2012 年73 巻3 号 p.
730-733
発行日: 2012年
公開日: 2012/09/25
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腹腔鏡下でのヘルニア嚢内ガーゼ充填がpreperitoneal approach法施行時のヘルニア嚢の同定に有効であった小児の非嵌頓大腿ヘルニアの1例を経験した.症例は10歳,女児.右鼠径部膨隆のため他院で右外鼠径ヘルニア根治術を施行されたが術後も消失せず,CTで右大腿ヘルニアと診断され,手術目的にて当院受診となった.立位で右鼠径部やや足側に3cm大の膨隆を認めるが還納は容易であった.手術時にヘルニア嚢の確認が困難になることを危惧し,その対策として,鏡視下にヘルニア門を確認するとともにガーゼをヘルニア嚢内に充填することで脱出状態を再現し手術を施行した.この手技により体表からも脱出部位が明確に確認でき,腹膜やヘルニア嚢の剥離も的確に施行可能になり,安全で確実な手術が行えた.
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