日本臨床外科学会雑誌
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症例
一過性高CEA血症を呈した虚血性大腸炎を合併したS状結腸癌の1例
田畑 信輔出口 正秋石田 誠恩地 英年戸川 保大槻 忠良
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キーワード: CEA, 虚血性腸炎, 大腸癌
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2012 年 73 巻 3 号 p. 632-637

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抄録

症例は59歳,男性.下腹部痛,腹部膨満を主訴に受診し,S状結腸癌による閉塞の診断となり当院入院,経肛門的イレウス管留置にて減圧処置とした.イレウス管留置後,敗血症ショック,急性腎不全,心不全合併したが,保存的治療にて軽快した.入院時の血液検査にてCEAが74.4ng/mlと高値を示し,結腸癌による上昇と判断していたが,全身状態,虚血性腸炎改善後の再検査にて1.9ng/mlと低下を認めたため,閉塞性大腸癌に合併した虚血性大腸炎による一過性のCEA上昇と判断した.
S状結腸癌に対し腹腔鏡補助下S状結腸切除を施行し,吻合後の術中下部内視鏡検査にて吻合部口側の下行結腸全体に縦走する浅い潰瘍,びらんを認め,切除標本にも一部同様の所見を認めた.病理結果も虚血性変化に矛盾しない組織像であった.
今回われわれはS状結腸癌に一過性の高CEA血症を示す虚血性大腸炎を合併したまれな症例に経験したため,若干の文献的考察を加え報告した.

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© 2012 日本臨床外科学会
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