2012 年 73 巻 3 号 p. 654-658
症例は77歳,男性.C型肝炎にて近医で経過観察されていた.2005年に肝内腫瘍を認めるも造影効果がなく境界病変が疑われ経過観察されていたが,2006年9月に増大傾向を示したため,当科紹介となった.肝S7:40mm,S6:35mm,S3:10mmの3個の造影効果を伴わない不整型の腫瘍とS6:15mm,S7:20mmのCT所見上,典型的な肝細胞癌を認めた.術前診断にて造影効果を認めない3個の腫瘍はMRIのT2強調像で高信号を示し,ブドウの房状を示す低エコー腫瘍として描出され,その特異な形態からも悪性が疑われ,手術を施行した.病理組織学的には造影効果を認めない腫瘍は紡錘細胞で構成されるも免疫組織学的に上皮性成分が混在する腫瘍であり,肉腫様肝癌と診断された.その他の2個の腫瘍は中分化型肝細胞癌であった.特徴的な超音波像が確認された症例であり,また,肉腫様肝癌が発生早期から肉腫化することを示唆する症例と思われたため,若干の文献的考察を含め報告する.