2012 年 73 巻 4 号 p. 1002-1007
症例は59歳,女性.2011年4月,腹部腫瘤を自覚し当院を紹介受診した.右下腹部に可動性良好な手拳大の腫瘤を触知し,造影CT検査では,骨盤腔内に径6×5cm,境界明瞭で内部濃度均一な低濃度の充実性腫瘤を認めた.画像所見から小腸GISTを疑い手術を施行した.開腹すると,横行結腸間膜に位置し,横行結腸と連続する表面平滑な弾性硬の腫瘤を認めた.右半結腸切除術を施行し腫瘤を摘出した.切除標本の病理組織検査では,異型性の乏しい核を有する紡錘形の線維芽細胞の増生を認め,免疫染色ではβ-catenin,Vimentin,S-100蛋白が陽性,c-kit,CD34,α-SMA,ki67が陰性であり,横行結腸間膜原発のデスモイド腫瘍と診断した.家族性大腸腺腫症や開腹手術の既往のない横行結腸間膜原発デスモイド腫瘍の報告は稀であるため,文献的考察を加えて報告する.