抄録
術前化学療法で病理学的完全奏効(以下pCR)を得られたのにもかかわらず,術後1年目に脳転移をきたした症例を経験したので,報告する.症例は78歳女性.右乳房C領域に2.8cmの腫瘤と腫大した腋窩リンパ節を触知し,針生検で浸潤性乳管癌,核グレード1,ER(-),PgR(-),HER2 3+と診断した.パクリタキセルとトラスツズマブによる術前化学療法後,乳房切除+腋窩リンパ節郭清術を施行した.切除標本内には異型細胞を認めず,pCRと判断した.術後トラスツズマブの投与を6カ月行い,経過観察とした.術後1年経過したところで左小脳半球に6cm大の転移を認めたため,小脳に39Gyの放射線照射を行った後,カペシタビンとラパチニブ投与を開始した.脳転移発症より22カ月経過したが,現在まで無増悪生存中である.