2012 年 73 巻 4 号 p. 894-898
症例は40歳,男性.激しい腹痛,嘔吐を主訴に来院した.腹部造影CTにて内ヘルニアに伴う絞扼性イレウスと診断し緊急手術を施行した.術中所見では右傍十二指腸ヘルニアおよびその口側の空腸の軸捻を認めた.また,Treitz靱帯を認めず,小腸および右側結腸間膜の固定が不完全であり,腸回転異常症を伴っていた.ヘルニア門を開放し,腸管を整復すると血流改善を認めたため腸管切除は施行しなかった.
傍十二指腸ヘルニアは腸回転異常症の一病態と考えられる.時に嵌頓,軸捻転により絞扼性イレウスの原因となり大量腸管切除を必要とするような重篤な病態となる.開腹歴のないイレウスでは傍十二指腸ヘルニアを念頭に置き,迅速な診断,治療を行うことが重要である.