日本臨床外科学会雑誌
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症例
プロテインS低値が誘因と考えられた上腸間膜静脈血栓による小腸壊死の1例
田中 裕美子森本 芳和弓場 健義藤井 眞赤丸 祐介山崎 芳郎
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2012 年 73 巻 4 号 p. 903-908

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抄録

症例は61歳,男性.主訴は腹痛.2009年9月上旬より間欠的腹痛が生じ,同月17日より腹痛が急激に増悪し,当院に救急受診した.腹部造影CT検査にて,上腸間膜静脈から門脈に及ぶ広範な血栓と小腸の腸管壁内エアー像を認め,腸間膜静脈血栓による小腸壊死と診断した.緊急手術の結果,回腸が80cmにわたって壊死に陥り,壊死領域の回腸静脈枝は血栓により完全閉塞していた.壊死小腸を120cm切除し,回腸人工肛門を造設した.病理組織学的所見では回腸粘膜に高度の鬱血・出血が認められ,静脈内にはフィブリン塊を検出した.術後の血液凝固検査において,プロテインS抗原34%,同活性値11%と著しい低値を示し,凝固・線溶系に関与するプロテインS低値が本症例の発生原因と考えられた.

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© 2012 日本臨床外科学会
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