日本臨床外科学会雑誌
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症例
直腸扁平上皮癌と考えられた1例
坂本 義之村田 暁彦小山 基諸橋 一櫻庭 伸悟袴田 健一
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2012 年 73 巻 4 号 p. 936-941

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抄録

症例は67歳の女性.平成21年10月,下血を自覚し近医を受診.大腸内視鏡検査を施行され,肛門縁より約10cmの直腸Raに易出血性2型病変が認められた.生検にて扁平上皮癌の診断が得られた.初診時,直腸指診では肛門縁より約10cmの直腸Raに腫瘍の下縁が触知された.腹部CTにて,#216リンパ節転移が疑われた.術前放射線療法の方針とし,合計45Gyの照射を行った.照射と合わせてS-1:80mg/日の内服を2週投与1週休薬で行った.平成22年2月,腫瘍縮小効果を認めたため手術(低位前方切除術D3,大動脈周囲リンパ節郭清,予防的回腸ストーマ造設術)を施行した.病理組織学的検査では,no residual tumorで術前の化学放射線療法の効果はCR(grade3),#216LNもCR(grade3)と評価された.大腸原発の悪性腫瘍はほとんどが腺癌で,直腸扁平上皮癌の発生は0.1%以下1)と非常にまれであり,その治療に関して確立したものはほとんど報告されていない.今回生検標本から扁平上皮癌と考えられたまれな症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2012 日本臨床外科学会
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