2012 年 73 巻 4 号 p. 993-996
症例は33歳,女性.19年前に腹膜炎合併虫垂炎にて虫垂切除術を施行されていた.2006年12月頃より虫垂切除術後創部の疼痛が時々出現,2010年9月頃より創部の疼痛が増悪し,同部の皮下結節を触知するようになった.結節は径約1.5cmで可動性はなく弾性硬であった.術前検査にて筋膜縫合部の縫合糸を原因とするSchloffer腫瘤が疑われ,腰椎麻酔下に切除術を施行した.病理組織学的所見で切除組織内に子宮内膜組織を認め,子宮内膜症と診断された.子宮内膜症のうち,手術後の腹壁に生じる腹壁瘢痕部子宮内膜症は,約80%が帝王切開などの婦人科領域の手術既往によるものであるが,本症例は虫垂切除後の腹壁瘢痕部に発生したものであり,稀有な症例であるため,報告した.