日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡補助下に切除した直腸間膜原発嚢腫状リンパ管腫の1例
竹内 信道久保 直樹芳澤 淳一荻原 裕明中山 中伊藤 憲雄
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2012 年 73 巻 5 号 p. 1274-1277

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抄録

直腸間膜由来の骨盤内リンパ管腫に対して,腹腔鏡補助下切除を行った.症例は52歳女性.1年前より続く排尿切迫感と排便困難を主訴に当科を受診した.骨盤CTで,直径9cmの多胞性嚢胞状腫瘍を骨盤内に認め,MRIの所見もあわせて,直腸間膜由来のリンパ管腫と診断した.腹腔鏡下にS状結腸から下部直腸を後腹膜から剥離授動して骨盤内の視野を確保してから腫瘍を剥離すると比較的容易に授動されたので,下腹部に小切開をおいて腫瘍を摘出した.腸間膜および腸管切除は不要であった.腸間膜リンパ管腫は比較的まれな良性疾患で特異的な症状はないため,特に女性においては婦人科疾患と混同され開腹後に診断されることも多い.本症例ではCTで多発する嚢胞のあいだを上直腸動脈の枝が通過する所見から術前に診断が可能であった.腸間膜由来の良性疾患は腹腔鏡下手術のよい適応であるが,特に骨盤内においては視野確保のために有利であると思われた.

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© 2012 日本臨床外科学会
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