日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃癌術後に肺炎球菌による脾摘後重症感染症を発症した1例
北見 智恵河内 保之西村 淳牧野 成人川原 聖佳子新国 恵也
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2012 年 73 巻 7 号 p. 1629-1633

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抄録

胃癌術後に発症した肺炎球菌によるoverwhelming postsplenectomy infection(OPSI)の1例を報告する.症例は76歳女性.胃体上部進行胃癌に対し胃全摘術+脾摘術を施行した.術後10カ月,感冒様症状が出現した2日後,発熱,意識障害のために緊急入院した.血液検査で播種性血管内凝固症候群(DIC)を認め,抗生剤,DIC治療を開始した.DICは3日で離脱したものの白血球増多,CRP高値は持続した.血液培養から肺炎球菌が検出され,感受性をもとに抗生剤を変更,症状,検査値ともに改善した.脾摘術の既往,急激なDICへの進行からOPSIと診断した.OPSIは一旦発症すると急激な経過をたどることが多く,予防として肺炎球菌ワクチン接種が推奨されている.本例では発症前ワクチンは未投与で,本病態の認識不足を反省させられた.脾摘後は常にOPSIを念頭において診療にあたるべきである.

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© 2012 日本臨床外科学会
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