2012 年 73 巻 7 号 p. 1764-1769
症例は63歳,男性.胃癌術後の経過観察中であった.定期検査の腹部CT検査にて,肝S7に8mm大の低吸収域を指摘されたが,質的診断困難で経過観察された.半年後,同部位は25mm大に増大,悪性疾患を疑い肝S7部分切除を施行した.術後病理診断で血管肉腫と診断された.腫瘍が断端陽性であったため3週間後に肝右葉切除を行った.術後2カ月で,残肝に再発をきたし,5カ月で小転移巣がびまん性に出現した.Recombinant interleukin-2(rIL-2)の持続動注療法を施行し一時的に奏効を得たが,すぐに再燃をきたし,以後経過観察とした.腫瘍は緩徐に増大を示したが長期間,全身状態は良好に保たれた.術後1年9カ月頃より腫瘍の急速な増大をきたし,肝機能障害が出現.発見から2年8カ月目に肝不全を呈し死亡した.比較的早期に切除し得たが再発死亡をきたし,肝血管肉腫の悪性度の高さが類推された.